メインギャラリーの緊張と人いきれの中で、ソトゥビー会長のピーター・ウィルソンがオークションを行っている。

確かな手腕で入札をとりしきり、しかも驚くほどくつろいだ雰囲気を醸し出している。

「オークションはとっつきにくい催しであってはならない」と彼はいう。「私は、自分のことを如才ない支配人くらいに思っている」ピーター・ウィルソンは、すでに1,500回以上ものオークションを務めてきているが、それに伴う感興も手順も少しも変わっていない。彼は、推定価値が50ポンドの品物であろうと5万ポンドの品物であろうと、事前に目を通さずにオークションにかけることはない。彼がソトゥビーに入社した頃は従業員36人の小さな企業であったが、今や美術品界の中心的存在といっても異論はないところ。

ニューヨーク、モンテカルロ、香港、チューリッヒでオークションを開き従業員総数は1,000人を越えている。

― 彼が6ヶ月間の試用社員として初めて採用された当時のことを思えば、格段の発展といえるだろう。

ピーター・ウィルソンは毎年、4分の1は世界中のソトゥビー社を飛び回って暮らしている。彼にとって時間厳守が何にもまして重要なことは、だれの目にも明らかだ。

ロレックスデイトジャスト。彼が身につけている時計である。

「私は機械に強くはないが」と前置きし、「しかし、どんな分野のものであれ、出来栄えのすぐれたものを見る眼はもっている」と語っている。

そういえば、ソトゥビーのどのカタログにも、セールの時間は11時きっかりと書かれているが、これは決して偶然ではない。彼とロレックスの関わりの深さを物語っている。

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